文書作成日:2020/03/10
相続した一括償却資産の未償却残高の取扱い

[相談]

 私の父は個人事業を営んでいましたが、今年の1月下旬に亡くなり、事業は私が引き継ぎました。
 父の昨年分の所得税の確定申告書は、まだ提出していません。
 そこでお聞きしたいのですが、父が所得税法上の一括償却遺産として申告していた減価償却資産の未償却残高は、どのような取扱いとなるのでしょうか?


[回答]

 ご相談の一括償却資産の未償却残高については、原則的には、亡くなったお父様の最後の確定申告(準確定申告)において、その全額を廃業年分の事業所得の必要経費に算入することとされています。
 ただし、例外的な取り扱いも設けられていますので、下記解説をご参照ください。


[解説]

1.所得税法上の一括償却資産とは

 所得税法上、事業用の減価償却資産で、その取得価額が20万円未満であるもの(原則)については、その減価償却資産を一括し、その合計額の3分の1に相当する金額を、事業供用した年以後3年間の各年分において、それぞれ必要経費に算入することができることと定められています。
 このとき、その一括された減価償却資産のことを「一括償却資産」といいます。

2.個人事業者が年の途中で死亡した場合の確定申告(準確定申告)の概要

 所得税法上、個人事業者が年の途中で亡くなった場合のその年分の確定申告は、その亡くなった人の相続人が行わなければならないことと定められています。
 また、今回のご相談の場合のように、個人事業者が前年分の確定申告書を提出する前に亡くなった場合には、その前年分の確定申告書についても、相続人が提出しなければならないことと定められています。
 提出期限は、相続人が相続の開始があったことを知った日の翌日から4月を経過した日の前日(相続の開始があったことを知った日の翌日から4ヶ月以内)です。
 この確定申告のことを「準確定申告」といいます。

3.相続した一括償却資産の未償却残高の取扱い

 上記1.で説明した一括償却資産について相続があった場合には、その一括償却資産の取得価額のうち、まだ必要経費に算入されていない部分(未償却残高)は、原則として、亡くなった人の亡くなった年分の必要経費に、その全額を算入することとされています。
 ただし、今回のご相談の場合のように、亡くなった人の事業を引き継いだ人がいる場合であって、亡くなった年の翌年以後の各年分において必要経費に算入されるべき未償却残高があるときは、その取扱いについて次のような例外が設けられています。

(一括償却資産の未償却残高の例外的取扱い)

  1. 亡くなった年分に必要経費に算入されるべき金額…亡くなった人の必要経費に算入
  2. 亡くなった年の翌年以後の各年分において必要経費に算入されるべき金額…事業を引き継いだ人の必要経費に算入

 したがって、今回のご相談の場合における、相続した一括償却資産の未償却残高については、原則的にはその全額を亡くなったお父様の亡くなった年分(今年分)の必要経費に算入することとなりますが、本来であれば来年以降の各年分において必要経費に算入されるべき未償却残高がある場合には、その部分についてのみ、事業を引き継いだご相談者の来年分以降の必要経費に算入することも可能となります。

 原則的な取扱いと例外的な取扱いのどちらを採用したかによって、亡くなった方と相続人、それぞれの所得税の納税額が変わる場合があります。このようなケースに該当した場合には、当事務所にご相談ください。


[参考]
 所法124、125、所令139、所基通49-40の3など


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